Tanka
短歌
萩原慎一郎は非常に多作な歌人で、雑誌や大会などの受賞作、新聞、りとむ短歌会などで発表した短歌は約2千首存在します。
歌集に収録されていない短歌はいまだ数多く存在しており、萩原慎一郎はいつか昔の作品も歌集として出版したいと話していました。
これらが今後何らかの形で歌集として出版出来る事を願って、ここではその中の一部を抜粋して紹介します。
2017年 (32歳)
角川短歌賞用作品集「虹色の橋」2017年5月12日執筆
自転車で知らない街を駆け抜けた それこそぼくの青春だった
このままでいいのかなどと眼鏡拭きながら自分の部屋で思った
角川『短歌』2017年1月号 佳作 (今野寿美選)
夏の旅 ぼくは自宅で読書してこころの旅をしているのだよ
2016年 (31歳)
NHK短歌2016年5月号 (栗木京子選)
「駅まで一緒に行こう」そう言ってきみと話せた飲み会の後
NHK短歌2016年3月号 短歌de胸キュン (佐伯裕子選)
虫籠のように作った短歌たち入れておくのは携帯電話
2014年 (29歳)
角川短歌賞用作品集「戦時下のキス」2014年3月31日執筆
理想とはどこにあるのか 職場にて考え込んでしまうときあり
短歌研究新人賞用作品集「時代はクロール」2014年1月14日執筆
紙飛行機ほどの無力なこの歌をきみに届けと世界に放つ
2013年 (28歳)
角川『短歌』2013年9月号 佳作 (佐伯裕子選)
うしろから抜かれることに悔しさはないがペダルを漕ぎ続けるよ
第19回与謝野晶子短歌文学賞 (今野寿美選)
そこにある光の破片友の絵の飾られている画廊に行けば
短歌研究2013年5月号 うたう☆クラブ (横山未来子選)
街じゅうのあらゆるものを濡らしたる雨雲が去るぼくの頭上を
角川『短歌』2013年4月号 佳作 (沢口芙美選)
青春という名の地獄生きてきて戻りたくないあの教室に
第4回角川全国短歌大賞 東京都賞 (林田恒浩選)
両手にごみ袋提げて部下のなきおとこの朝の仕事始まる
2012年 (27歳)
角川『短歌』2012年12月号 秀逸(奥村晃作選、三井修選)、佳作(今野寿美選)
人生を変えるヒントを探す日々本にときにはジェイポップスに
短歌研究2012年11月号 うたう☆クラブ 佳作(加藤治郎選)
ぶちまけろ、この感情を。ぶちまけろ、この詩型へと、この世界へと
短歌研究新人賞2012年9月号 佳作
自分を責める必要ないと言われつつ自分を責めているぼくがいる
NHK短歌2012年5月号 花山多佳子選
「短歌史を塗り替えてみせる」と意気込んでいる大声で言えないけれど
角川『短歌』2012年3月号 佳作 (篠弘選、三井ゆき選)
勤め終え地下鉄通路歩くときなんだか歌いだしたくなりぬ
NHK短歌2012年3月号 佳作(坂井修一選)
通勤の電車のなかで昨日の夜の続きから読み始めたり
2011年 (26歳)
角川『短歌』2011年12月号 佳作 (坂井修一選)
青空を泳ぎ疲れてやすむ鳥 プールサイドのような地上に
角川『短歌』2011年12月号 秀逸 (沖ななも選)
日常をそっと抜け出し冒険に出たくて本を読むのだ、きっと
NHK短歌2011年10月号 佐伯裕子選
直接に見ることできず初恋は窓ガラス越しの君を見ていた
2010年 (25歳)
角川『短歌』2010年1月号 佳作1席(三井ゆき選)、佳作(加藤治郎選)
目的地特に定めず自転車で駈け抜けた日々 無駄でないはず
2009年 (24歳)
角川『短歌』2009年12月号 秀逸(小塩卓哉選)、 佳作(伊藤一彦選)
オリオン書房出でて見あげた夜の空の向こうにかすかなる光あり
角川『短歌』2009年8月号 佳作1席(小高賢選)
雲の数かぞえてみたくなるような最高の晴天 図書館へ
NHK短歌2009年4月号 佳作(川野里子選)
思い出の場所に行っては帰り道思い出の缶珈琲を飲む
第14回前田純孝賞学生短歌コンクール 神戸新聞社賞1席 (佐佐木幸綱選)
良い意味で人生を一変させるような出逢いを待つ傘差して
平成20年度NHK全国短歌大会 入選
僕たちの人生の春告げ鳥は何処に?街にて必死に探す
2008年 (23歳)
角川『短歌』2008年4月号 佳作 (河野裕子選)
そのうちに消えてなくなる曇天の記憶です そのうちに必ず
角川『短歌』2008年1月号 佳作 (松坂弘選)
踏まれやすき位置に咲きたるタンポポよ負けるなきっといいことあるから
2005年 (20歳)
短歌研究2005年3月 佳作(岡井隆選)
頭が重く悩んでばっかのぼくたちは、 きっと稀なるウーパールーパー
短歌研究2005年2月 佳作(岡井隆選)
降り積もる想いさえない、なさけない、ぱっとしないと溜め息は毒
2004年 (19歳)
短歌研究2004年10月 佳作 (石川不二子選)
日を重ね日を重ねゆく折り鶴を折るように君を恋する街に
短歌研究2004年9月 準特選 (島田修二選) 2005綜合年刊歌集掲載
屋根つたひ雨の落ちたる音ならむ深夜は耳が敏感になる
孤立者の叫びのごとく雨音の激しき夜にレポートを書く
雨音を聞きつつ明日の締め切りのレポートを書く友もおそらく
駅前に迎への車を待ってゐる人ありぼくは雨中走る
改札を抜ければ外はどしゃ降り鞄の底の傘を探せり
角川『短歌』2004年8月号 佳作(吉井宏志選)
雨傘を差してしばらく君を待つバス停もはや来ずとわかれど
短歌研究2004年4月 佳作 (馬場あき子選)
空調の音のみ聞こゆ面接の前のひととき私語のなき部屋
緊張をほどよく愛し面接の前のひととき椅子に座れる
合格の通知の届き闇夜抜けゆく思ひなりいでくるなみだ
角川『短歌』2004年3月号 佳作 (岡井隆選)
かっこいい理想に届かぬ自分いてばかばかばかと身を責める癖
角川『短歌』2004年3月 秀逸 (川野里子選)、佳作(三枝昻之選)
はるかなる孤独とぼくは大げさな言葉で以ってかっこつけたがる
短歌研究2004年3月 準特選 (岡井隆選)
雨降りてコンビニに寄り雨宿りひとまず缶のコーヒーを買う
やむなしとビニール傘を買いましてコンビニを出づ雨の降るなか
すでに雨降りつつおれば君濡れてビニール傘を手に渡したし
びしょ濡れのTシャツ絞りつつストーブ点けて部屋温める
レトルトのカレー温め手間暇をかけずの食の多き独り居
2003年 (18歳)
朝日新聞 朝日歌壇2003年12月14日 近藤芳美選
屑籠に入れられていし鞄があればすぐにわかりき僕のものだと
角川『短歌』2003年11月 佳作 (栗木京子選)
前髪を垂らして自我をころしつつ「存在」という言葉に悩む
現代歌人協会 第32回全国短歌大会 佳作(栗木京子選)
夜汽車に揺られ僕らは人生の分岐点へとゆきし試験日
現代歌人協会 第32回全国短歌大会 選者賞(外塚喬選)
答案は真っ白だからみずからの知恵を凝縮させて解きゆく
角川『短歌』2003年10月 佳作 (栗木京子選)
甘夏の弾けるやうな一粒に恋の思い出いっぱい詰まる
NHK歌壇2003年9月 佳作(福島泰樹選)
嫌気して歩道橋で黄昏れた無意味のような価値ある時間
第3回ネット短歌コンクール 特選 (小島ゆかり選)
例えれば海の銀河に君がいてシーラカンスのような幻
第9回「与謝野晶子短歌文学賞」青春の短歌 天草町長賞
助走をつけてハードルをひとつひとつと飛び越えていけばいいのだと春
短歌研究2003年9月 第46回短歌研究新人賞予選通過作品
山積みにされし課題をひとつずつ眼の中収め解きてゆきたり
愛情の裏返しなる暴言ととれぬあいつの言動である
短歌研究2003年8月 佳作 (島田修二選)
正義感だけは携へ生きてゐるつもりなのだが理解されない
角川『短歌』2003年6月 秀逸 (今野寿美選)
階段をひとつひとつと登るためぼくはひと通り宿題をやる
短歌研究2003年6月 佳作 (馬場あき子選)
もうすぐで卒業になるすこしづつ苦ひ思ひ出変へていきたい
NHK歌壇2003年6月 佳作(松平盟子選)
現実に食われてしまいし夢もありグローブ捨てて鉛筆握る
NHK歌壇2003年5月 入選(春日井建選)
ローランドゴリラが胸を叩きたり動物園の檻の絶叫
NHK歌壇2003年5月 佳作(藤井常世選)
言の葉がすとんと胸に届きけり疎遠の友と再会せし日
短歌研究2003年4月 佳作(馬場あき子選)
ジャングルジムにぽつんとひとり佇みし孤独に耐へし少年ありし
角川『短歌』2003年4月 特選 (今野寿美選)
吐く息は君の口から放たれて冬の景色に溶け込むカモメ
角川『短歌』2003年3月 秀逸(三井ゆき選)、佳作 (内藤明選)
月明かり差し込む窓辺てのひらをひらひらさせて思想を紡ぐ
短歌研究2003年2月 準特選(岡井隆選) 2004綜合年刊歌集掲載
すれ違い幾等とも無く繰り返しやっと行き着く最小公倍数
模擬試験会場にてチャイムの合図とともに音の凄まじ
容量オーバーの問いに真っ白になってしまった五分前の顔
「どうしよう」とか思ってももう遅いここに来てある反省事持つ
天命にまかせるものとなったのさ試験終了悔いはあらずと
2002年 (17歳)
同志社女子大学「SEITO百人一首」2002年12月入選
一言の重さを感じるこの頃は君がいなくて寂しく思う
角川『短歌』2002年12月 佳作(道浦母都子選、沢口芙美選)
あくがれを胸の銀河に閉じ込めてわれゆっくりと立ち退けり。「亦旅をせよ」
角川『短歌』2002年11月 秀逸(高嶋健一選)、佳作(道浦母都子選)
教室の中心の旅をするために短歌を詠みて旅人になれる
角川『短歌』2002年10月 特選(道浦母都子選)
ふるるるる風の吹きたる六月に雨の交じりて恋の始まる
NHK歌壇2002年9月 佳作(藤井常世選)
空き椅子に留まる蜻蛉の肉眼に頬の赤らむ君の映らむ
角川『短歌』2002年7月 佳作 香川ヒサ選
部屋に居て我を問いても意味はなく我を問うため旅路へ急ぐ